AMRとAGVは、名称だけでは完全に二分できない。一般的な製品比較では、床の誘導体に沿う経路誘導式AGVと、地図・センサで経路を計画するAMRを分ける。ただし広義のAGVには自律移動式も含まれる。表紙の略語より、実際の走り方を確かめるのが先である。
呼び名は、きっぱり二つに分かれない
AGVはAutomatic Guided Vehicleの略で、日本語では無人搬送車と呼ばれる。シナノケンシの公式コラムは、磁気テープやランドマークなどの誘導体を検知し、決められた経路を走る搬送車としてAGVを説明している(2026年8月27日確認)。これは、AMRとの比較でよく使われる代表的な整理である。
一方、日立製作所の物流DX用語集は、AGVを「定められた領域や経路を自動走行して商品を搬送する車両」と広く捉え、走行方式を経路誘導式、自律移動式、追従式に分けている。同ページが参考文献に挙げるのは、無人搬送車システムの用語を定めたJIS D 6801:2019である(2026年8月27日確認)。この整理では、誘導体なしで経路を計画する車両もAGVに含まれる。
AMRはAutonomous Mobile Robotの略で、自律移動ロボットを指す。搬送用途の製品では、自律走行搬送ロボットとも呼ばれる。シナノケンシは、SLAMで環境地図を作り、自己位置を推定しながら経路を探索する方式と説明している。SLAMのアルゴリズムは本記事の範囲外とし、ここでは「床の誘導体ではなく、地図とセンサを使って経路を決める」という運用上の性質だけを見る。
したがって、「AGVかAMRか」というラベルは資料の発行元によって重なる。違いを確認するときは、次の四項目を製品資料から読む。
代表的な経路誘導式AGVとAMRを四項目で比べる
| 確認項目 | 代表的な経路誘導式AGV | 代表的なAMR |
|---|---|---|
| 誘導体 | 磁気テープなど、床や設備側の誘導体を使う | 床側の誘導体を使わず、地図とセンサを使う機種が中心 |
| 経路の決め方 | 設定した経路に沿う | 地図上で目的地までの経路を計画する |
| 障害物があるとき | 経路上で停止し、障害物が除かれるのを待つ方式が代表的 | 検知して停止または迂回する。動きは機種と設定による |
| レイアウト変更時 | 誘導体の張り替えや経路の再設定が要る | 地図の更新と目的地・走行条件の再設定が要る |
表はシナノケンシ公式コラムの比較をもとに、現場で確認する四項目へ整理した(2026年8月27日確認)。すべてのAGV・AMRをこの二列へ固定する表ではない。製品によってガイドと自律走行を組み合わせる場合も、障害物を検知したあと停止を選ぶ場合もある。呼び名ではなく、取扱説明書や仕様書に書かれた動作を優先する。
現場では、経路の固定度と変更作業から選び分ける
出発点と到着点が決まり、同じ搬送を繰り返す現場では、経路誘導式AGVが候補になる。決めた経路から外れないため、設備や人の動線を先に分離して設計しやすい。一方で、工程変更のたびに誘導体や経路設定を直すなら、その作業も運用負担として数える必要がある。
経路や目的地の変更が多く、人や台車と通路を共有する現場では、AMRの経路計画が候補になる。ただし「自律」の一語だけで導入しやすいとは決められない。通路幅、床の段差、積載物、通信、充電、既存設備との接続まで含めて確認する。Amazonが倉庫向けに公表したProteusは自律移動型の一例であり、倉庫全体の分担は倉庫ロボットの職務経歴で扱っている。
ここまでを一言で言えば、固定経路そのものが悪いのではなく、変更の頻度と現場の動きに合っているかが分かれ目になる。方式を選ぶ前に、「何を、どこからどこへ、何回運ぶか」と「経路はどのくらい変わるか」を一枚に書くと比較しやすい。
安全はAMR・AGVという名称では決まらない
ISO 3691-4:2023は、無人産業車両とそのシステムの安全要求を扱い、対象例としてautomated guided vehicleとautonomous mobile robotの両方を挙げている(ISO公式・2026年8月27日確認)。つまり、AMRという名称や障害物回避機能があることだけで、人と同じ通路を無条件に走らせてよいとは判断できない。
どちらの方式でも、走行エリア、速度、積載物、人との交差、非常停止、異常停止後の復帰を、機種と現場に合わせて評価する必要がある。立ち往生や異常停止のときに誰が止め、引き取り、復帰させるかは人の仕事として残る。監督の分担を決める順序は人が監督する条件の決め方に分けている。
よくある誤解
第一の誤解は「AMRはAGVの上位互換」である。自律走行は変更へ対応しやすいが、固定経路の反復搬送では、経路誘導式AGVが候補から外れるわけではない。優劣ではなく、経路の固定度と変更作業で比べる。
第二の誤解は「AMRなら人がいても安心」である。検知後に停止するか迂回するかは、機種と設定、障害物や積載物の条件による。通路幅や速度、人の流れを含む現場の評価と、止める権限を持つ人は省略できない。
第三の誤解は「AGVとAMRは厳密に二分できる」である。日立製作所の用語集は、経路誘導式に加え、自律移動式と追従式もAGVの走行方式として並べている。資料によってはAMR的な走り方も広義のAGVに含まれるため、最初に製品名を分類するより、走行方式の四項目を読むほうが確実である。
隣の用語との境界
AMRとAGVは、移動して物を運ぶ車両・ロボットの用語である。据え付けた腕で人の近くの作業を担う協働ロボットは別系統で、安全の評価対象も異なる。
手元の資料を開いたら、まず誘導体、経路の決め方、障害物時の動き、変更作業の四つに印を付ける。それができれば、表紙にAMRとAGVのどちらが書かれていても、走り方を自分の言葉で説明できる。

